自動車整備士と鈑金・塗装の違いとは?仕事内容・資格・向いている人をわかりやすく解説
- 豆知識

「自動車整備士と鈑金・塗装って、何が違うの?」
どちらも自動車を修理する仕事ですが、実は担当する部分や必要な技術は大きく異なります。
簡単に分けると、自動車整備士は車のエンジンやブレーキなどの「機能」を整える仕事。鈑金スタッフは、事故などでへこんだ車体の「形」を直す仕事。そして塗装スタッフは、修理した部分の「色や艶」を元の状態へ近づける仕事です。
今回は、自動車整備士と鈑金・塗装の仕事内容、資格、向いている人、未経験からの始め方などを分かりやすく紹介します。
Contents
自動車整備士と鈑金・塗装の違い
まずは、それぞれの違いを簡単に見てみましょう。
| 職種 | 主に担当する部分 | 仕事の目的 |
|---|---|---|
| 自動車整備士 | エンジン、ブレーキ、タイヤ、電装品など | 安全に走れる状態にする |
| 鈑金スタッフ | ドア、バンパー、ボンネット、車体フレームなど | へこみや変形を元の形へ戻す |
| 塗装スタッフ | 車体表面、修理したパネルなど | 周囲と違和感のない色や艶に仕上げる |
事故で車の前側をぶつけた場合を例にすると、自動車整備士が足回りや内部部品に問題がないかを確認し、鈑金スタッフが変形したボディを修復します。
その後、塗装スタッフが周囲の色に合わせて塗装し、修理箇所が分からない状態へ仕上げます。
同じ自動車修理の仕事でも、それぞれ役割が異なるのです。
自動車整備士とは?
自動車整備士は、車の「走る・曲がる・止まる」を支える仕事です。
エンジンやブレーキ、ハンドル、タイヤ、サスペンション、バッテリー、電気系統などを点検し、不具合があれば修理や部品交換を行います。
車を安全に走行できる状態へ整えることが、自動車整備士の重要な役割です。
自動車整備士の主な仕事内容
自動車整備士の仕事内容には、次のようなものがあります。
- 車検や法定点検
- エンジンオイルの交換
- タイヤ交換や空気圧の調整
- ブレーキの点検・修理
- バッテリーや電装品の点検
- エンジンや異音の故障診断
- 消耗部品の交換
- 整備後の試運転や最終確認
- 車両の引き取りや納車
- お客様への修理内容の説明
自動車整備士は、単に壊れた部品を交換するだけの仕事ではありません。
お客様から「走っていると変な音がする」「エンジンがかかりにくい」といった症状を聞き、音や振動、車両データなどを確認しながら原因を探します。
車の症状から故障箇所を推理する、車のお医者さんのような仕事ともいえるでしょう。
最近の自動車整備士はパソコンも使う
現在の自動車には、カメラやセンサー、コンピューター制御の装置が数多く搭載されています。
そのため、最近の自動車整備士はレンチやドライバーだけでなく、車両の故障情報を読み取る診断機器やパソコンも使用します。
機械の知識に加えて、電気や電子制御に関する知識も必要とされる仕事へ変化しています。
鈑金とは?
鈑金は、事故や接触によってへこんだり、曲がったりした車体を元の形へ戻す仕事です。
「板金」と表記されることもありますが、自動車修理の求人では「鈑金」と「板金」のどちらも、ほぼ同じ意味で使われています。
鈑金スタッフが修理する部分
鈑金スタッフが主に扱うのは、次のような車の外側部分です。
- ドア
- バンパー
- ボンネット
- フェンダー
- ルーフ
- サイドパネル
- 車体フレーム
鈑金というと、へこんだ部分をハンマーで叩く姿をイメージする人も多いかもしれません。
実際には、損傷した部品の取り外しや交換、溶接、研磨、車体の寸法確認など、さまざまな工程があります。
鈑金修理の主な流れ
まず、車体のどこまで損傷しているかを確認します。
表面だけがへこんでいるのか、内部の骨格まで曲がっているのかによって、修理方法が変わるためです。
軽いへこみであれば、ハンマーや専用工具を使って形を整えます。
大きく変形している場合は、車体を専用の修正機へ固定し、油圧などを使って正しい位置へ戻します。
修理が難しい部分については、損傷したパネルを切り取り、新しい部品を溶接することもあります。
最後に、細かな凹凸をパテで整え、塗装しやすい表面へ仕上げます。
鈑金は、塗装後の見た目を左右する大切な土台づくりでもあるのです。
塗装とは?
自動車塗装は、鈑金修理した部分へ塗料を塗り、周囲と違和感のない色や艶へ仕上げる仕事です。
単純に、車と同じ色の塗料を塗ればよいわけではありません。
車は紫外線や雨風などの影響を受けるため、同じカラー番号でも、新車時とは色合いが少しずつ変化しています。
そのため、塗装スタッフは実際の車体を見ながら、複数の塗料を細かく調整して色を合わせます。
この作業を「調色」といいます。
自動車塗装の主な流れ
塗装では、まず修理箇所の汚れや油分を落とし、表面を研磨します。
次に、塗料を付けたくない窓やタイヤ、ライトなどを紙やビニールで覆う「マスキング」を行います。
その後、下地となる塗料を塗り、細かな傷や凹凸を整えます。
下地が完成したら、実際の車体に合わせて調色した塗料を、スプレーガンで薄く均等に吹き付けます。
塗装後は、表面を保護して艶を出すためのクリア塗装を行い、十分に乾燥させます。
最後に塗装面を磨き、周囲のパネルと違和感がないかを確認して完成です。
塗装スタッフが目指すのは、お客様が見ても「どこを修理したのか分からない」と感じる仕上がりです。
自動車整備士と鈑金・塗装をさらに詳しく比較
| 比較する内容 | 自動車整備士 | 鈑金 | 塗装 |
| 主な目的 | 車の機能や安全を回復する | 車体の形を回復する | 色や艶、外観を回復する |
| 主に扱う部分 | エンジン、ブレーキ、電装品、足回り | ボディ、パネル、フレーム | 車体表面 |
| 判断するポイント | 音、振動、数値、診断データ | 形、寸法、損傷範囲 | 色、艶、光の反射 |
| 求められる力 | 故障原因を考える力 | 立体的に形を捉える力 | 色や表面の違いに気づく力 |
| 使用する道具 | レンチ、リフト、診断機器など | ハンマー、溶接機、修正機など | スプレーガン、塗装ブースなど |
| 汚れの種類 | オイル、グリス、ほこり | 鉄粉、パテ粉、研磨粉 | 塗料、研磨粉、溶剤 |
| お客様対応 | 比較的多い | 会社による | 会社による |
自動車整備士は、機械や電気、故障診断に関心がある人に向いています。
鈑金は、手を動かして形を作ることが好きな人に向いており、塗装は色や細かな仕上がりにこだわれる人に向いています。
自動車整備士になるには資格が必要?
自動車整備士は、国家資格がある仕事です。
資格には1級、2級、3級、特殊整備士などがあり、一般的な乗用車の整備では、二級自動車整備士の資格が求められることが多くあります。
ただし、資格を持っていなければ自動車整備工場で働けない、というわけではありません。
未経験・無資格で整備補助として入社し、働きながら資格取得を目指せる会社もあります。
自動車整備士資格のイメージ
3級自動車整備士
自動車の基本的な構造や、点検・整備について学ぶ入口となる資格です。
2級自動車整備士
一般的な点検や整備、修理を幅広く担当できる資格です。
求人で「自動車整備士資格必須」と記載されている場合、2級以上が求められるケースが多く見られます。
1級自動車整備士
電子制御や高度な故障診断、お客様への説明など、より幅広い知識や技術が求められる上位資格です。
鈑金・塗装に資格は必要?
鈑金・塗装は、入社時に必ず資格が必要な仕事ではありません。
未経験から入社し、先輩の作業を手伝いながら技術を身につける人も多くいます。
関連する資格には、自動車車体整備士や塗装技能士、溶接関係の資格などがあります。
資格がなくても仕事を始められる場合がありますが、資格を取得することで、専門的な知識や技術を持っていることを証明できます。
将来的に責任者や工場長を目指したい人にとっても、資格取得はキャリアアップにつながります。
未経験者はどんな仕事から始める?
自動車整備や鈑金・塗装の仕事は、未経験者がいきなり難しい修理を任されるわけではありません。
まずは、準備や補助作業から始め、少しずつ担当できる仕事を増やしていきます。
自動車整備士見習いの場合
未経験者は、次のような作業から始めることがあります。
- 洗車や車内清掃
- 工具や部品の準備
- タイヤの空気圧確認
- オイル交換の補助
- タイヤ交換の補助
- 点検作業の補助
- 車両の引き取りや納車
- 工場内の整理・清掃
仕事に慣れてきたら、消耗品の交換や定期点検、ブレーキ整備、故障診断などへ進んでいきます。
鈑金見習いの場合
鈑金では、次のような補助作業から始めることがあります。
- バンパーや部品の取り外し
- 修理箇所の研磨
- パテの準備
- 工具や材料の準備
- マスキング
- 軽いへこみ修理の補助
鈑金は、力任せに叩けばよい仕事ではありません。
金属がどの方向へ変形しているのかを見ながら、力を加える位置や強さを少しずつ覚えていきます。
塗装見習いの場合
塗装では、次のような準備や仕上げ作業から始めることがあります。
- 車体の洗浄や脱脂
- マスキング
- 塗装面の研磨
- 塗料や道具の準備
- 塗装ブースの清掃
- 塗装後の磨き作業
- 練習用パネルへの吹き付け
塗装は、少しのほこりや油分でも仕上がりへ影響します。
そのため、清掃や準備も大切な仕事の一つです。
自動車整備士に向いている人
自動車整備士には、次のような人が向いています。
- 機械や電気の仕組みに興味がある
- 原因を順番に考えることが好き
- 小さな音や違和感に気づける
- 安全確認を丁寧に行える
- 新しい技術を学ぶことが苦にならない
- 修理内容を分かりやすく説明できる
「車が好き」という気持ちは仕事を始めるきっかけになりますが、それだけが必要な条件ではありません。
分からないことを確認する姿勢や、安全に関わる作業を省略しない責任感も重要です。
鈑金に向いている人
鈑金には、次のような人が向いています。
- 手を動かして物を作ることが好き
- 立体的に形を考えることが得意
- 一つの作業へ集中できる
- 少しずつ形を整える作業が苦にならない
- 目に見える成果に達成感を感じる
- 経験を積み重ねることが好き
大きくへこんだ車が少しずつ元の形へ戻っていくため、完成したときに目に見える達成感を得やすい仕事です。
塗装に向いている人
塗装には、次のような人が向いています。
- 細かな色の違いに気づける
- 丁寧で几帳面
- 色やデザインに興味がある
- 根気強く作業を続けられる
- 清掃や準備を大切にできる
- 完成度にこだわれる
塗装は、塗料を吹き付ける技術だけではありません。
温度や湿度、スプレーガンを動かす速さや距離など、さまざまな条件によって仕上がりが変わります。
経験を重ねながら、自分の感覚と技術を磨いていく職人仕事です。
仕事の大変なところ
自動車整備士の大変さ
自動車整備士の仕事は、人の命や安全に関わります。
そのため、「おそらく大丈夫」という曖昧な判断はできません。
車種によって構造が異なるほか、ハイブリッド車や電気自動車、カメラ、センサーなど、新しい技術について学び続ける必要があります。
また、立ち仕事や中腰での作業が多く、職場によっては暑さや寒さ、オイル汚れなどへの対応も必要です。
鈑金の大変さ
事故やへこみの状態は車ごとに異なります。
同じ車種でも、ぶつかった場所や衝撃の強さによって修理方法は変わります。
力を加える場所を間違えると別の部分が変形することもあるため、経験と慎重な判断が必要です。
塗装の大変さ
塗装は、色を合わせるだけでなく、艶や表面の質感まで周囲と合わせる必要があります。
吹き付ける距離や角度、速さ、気温、湿度などによっても仕上がりが変わります。
塗料や溶剤を扱うため、換気設備や保護具など、安全対策が整った職場を選ぶことも大切です。
それぞれの仕事のやりがい
自動車整備士のやりがい
原因が分からなかった故障や異音を突き止め、車が正常に動くようになったときに、大きな達成感があります。
お客様から「安心して運転できます」と感謝されることも、仕事のやりがいにつながります。
鈑金のやりがい
大きくへこんでいた車体が、自分の技術によって元の形へ戻っていく様子を確認できます。
完成した姿を目で見て確認できることが、鈑金の大きな魅力です。
塗装のやりがい
塗装した部分と元の車体の境目が分からない状態へ仕上がったときに、技術者としての達成感を感じられます。
お客様から「どこを直したのか分からない」と言われることは、塗装スタッフにとってうれしい言葉の一つです。
将来のキャリア
自動車整備士のキャリア
未経験から整備補助としてスタートし、3級や2級の自動車整備士資格を取得する流れがあります。
経験を積んだ後は、故障診断や難しい整備を担当したり、整備主任者、自動車検査員、班長、工場長などを目指したりできます。
接客や説明が得意な人は、サービスフロントや整備アドバイザーへ進むこともあります。
鈑金・塗装のキャリア
鈑金・塗装では、見習いから軽い補修を担当し、経験を積みながらパネル交換やフレーム修正、難しい調色などへ進みます。
鈑金と塗装のどちらか一方を専門的に極める人もいれば、両方を担当できる鈑金塗装工を目指す人もいます。
将来的には、見積もりや工程管理、後輩の指導、工場長などを担当する道もあります。
電気自動車が増えたら仕事はなくなる?
電気自動車や自動運転技術が普及しても、自動車整備や鈑金・塗装の仕事がすぐになくなるわけではありません。
電気自動車ではエンジン関連の整備が減る一方で、高電圧バッテリーやモーター、電子制御装置など、新しい知識が必要になります。
また、現在の車には自動ブレーキ用のカメラやレーダー、各種センサーが搭載されています。
部品交換や鈑金修理を行った後に、センサーの位置や動作を調整する作業が必要になることもあります。
今後は、昔ながらの工具を使う技術に加えて、コンピューターや電子制御に対応できる人材が、より求められるようになるでしょう。
求人を選ぶときに確認したいポイント
自動車整備士や鈑金・塗装の求人を探すときは、給与や休日だけでなく、実際の仕事内容や職場環境も確認しましょう。
特に、次のような点を確認することが大切です。
- 無資格・未経験でも応募できるか
- 入社後はどの作業から始めるのか
- 資格取得支援制度があるか
- 資格取得費用を会社が負担するか
- 工具は会社支給か、個人で購入するのか
- 国産車、輸入車、大型車のどれを扱うのか
- 整備、鈑金、塗装のどの工程を担当するのか
- お客様への説明や接客があるか
- 引き取りや納車業務があるか
- 工場内に冷房やスポットクーラーがあるか
- 塗装ブースや換気設備が整っているか
- 資格手当や技術手当があるか
- 経験や資格による給与例が掲載されているか
求人に「自動車整備」や「鈑金・塗装」とだけ記載されていても、会社によって担当する仕事内容は異なります。
応募前に、自分がどのような作業を担当するのかを確認することが大切です。
まとめ
自動車整備士と鈑金・塗装は、どちらも自動車を修理する仕事ですが、担当する役割は異なります。
自動車整備士は、エンジンやブレーキ、電装品などを点検・修理し、車の安全や機能を支える仕事です。
鈑金スタッフは、事故などで変形したボディを元の形へ戻します。
塗装スタッフは、修理箇所を周囲と違和感のない色や艶へ仕上げます。
分かりやすく表すと、
- 自動車整備士は、車の中身を直す仕事
- 鈑金は、車の形を直す仕事
- 塗装は、車の見た目を直す仕事
と考えることができます。
機械や故障診断に興味がある人は自動車整備士、物を作ったり形を整えたりすることが好きな人は鈑金、色や細かな仕上がりにこだわりたい人は塗装が向いているかもしれません。
未経験から始められる求人もあるため、興味がある人は、研修内容や資格取得支援、入社後に担当する作業を確認しながら、自分に合った職場を探してみましょう。